EVee

前のページに戻る

全固体電池とは?実用化はいつ?トヨタ・日産・ホンダの最新動向とEVの未来を徹底解説

EVの基礎知識・導入編

全固体電池とは?実用化はいつ?トヨタ・日産・ホンダの最新動向とEVの未来を徹底解説

2026年5月29日 更新

「次世代のバッテリー」「EVの航続距離が倍になる」——。

EVオーナーや購入を検討している方なら、一度は”全固体電池”という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

「今のEVはすぐに古くなるの?」「全固体電池が出るまで待つべき?」といった不安や疑問の声もみかけます。

しかし、全固体電池について調べてみても、技術的な話が難解すぎて、結局自分たちにどう関係があるのかが見えにくいのも事実です。

そこで今回は、難しい専門用語は最小限に。

「全固体電池とは結局なんなのか?」「私たちのEVライフはどう変わるのか?」という視点で、最新の開発状況から実用化のリアルなタイムラインまでを分かりやすく整理しました。

全固体電池=中身がすべて固体の電池ってどういうこと?

全固体電池はかんたんに言えば中身がすべて固体でできている電池となります。

しかし、これだけではその意味やメリットは正直よく分かりませんね。

全固体電池が全部固体ということは、これまでのリチウムイオン電池は違うということです。リチウムイオン電池は中身に電解質が使用されていて、この電解質というのは液体なのです。

リチウムイオン電池と比較すると、さらに進化した電池であるいう位置づけになります。

そもそも電池はどうやって電気を生み出している?

ここでまずは従来の電池がどのように電気を生み出しているかを再確認しましょう。

電池の構造にはプラスとマイナスの正負の電極があり、その間にはさきほどの電解質という液体が存在します。

電解質を通してイオンが電極間を移動し、そこから電子(電気)が発生し充電や放電を行っているのです。

全固体電池のメリットは充電スピードの向上や容量のアップ

では全固体電池になることで、どんなメリットがあるのでしょうか。

充電のスピードがアップ!充電待ち時間が減る

まずは電解質が液体から固体になることで、イオンの移動が高速化することがあげられます。

液体の電解質をイオンが移動する際には、泳いで移動しているようなイメージを持っていただき、全固体電池ではしっかりとした道路を走って移動していると考えていただくと少し理解しやすいかと思います。

液体の中を泳ぐよりも固い地盤のある地面を移動する方がイオンが早く電極間を移動でき、結果として充電スピードが速くなるのです。

充電時間の短縮は、自宅充電での効率化にもつながりますし、外での充電でもより多くの充電ができることに繋がります。

外充電は時間に対して料金が加算されることが多いですから、電池の性能アップにより、同じ時間でもより多くの電気を充電できるかもしれません。

バッテリー容量がアップ!より長く走れる

また、これまで液体の電解質では正負の電極が触れ合うことが無いように、仕切り=セパレーターが設置されていました。

しかし、全固体電池の場合には固体の電解質自体がセパレーターの役割を果たすために、その分のスペースを使用することが可能です。電極の材料の選択肢も広がるなど、より省スペースでの電池の構成が可能になりました。

結果として、より大きな容量を実現できるようになっています。

参考:全固体電池 技術解説|テクノロジー|Honda公式サイト

さらに容量の大きなバッテリーが手に入ることで、これまで以上に走行距離を伸ばしたEVを作ることも実現できるでしょう。

例えば、これまでのEV軽自動車は20kWhほどの容量を持っていましたが、同じ車両サイズでももっと大きな容量を手に入れることができれば、さらに航続距離を伸ばした軽EVが生まれることになります。

参考:EVの軽自動車の特徴やどんな人に向いているかはこちら

発火リスクが大幅低減!安全性が高まる

さらに、全固体電池で使用される電解質は、従来の可燃性有機電解質ではないため、発火や爆発のリスクが大幅に下がっていることも注目のポイントです。

EVは車両火災が起きやすいかというと、統計上そうではありません。ガソリン車に比べての火災発生率は非常に低いという統計データが出ています。

参考:AutoinsuranceEZ.com Gas vs. Electric Car Fires in 2024 (Shocking Stats), Written by Laura Kuhl,Reviewed by Eric Stauffer

しかし、リチウムイオン電池は発火リスクは低いものの、鎮火にとても時間がかかることは事実です。EVと火災リスクについてはこちらのコラムで解説していますので、参考にしてみてください。

参考:EV(電気自動車)は火災リスクが高いって本当?知っておきたい安全ポイント

話を戻しますと、全固体電池の採用によりEV火災リスクを大きく下げることは、モビリティの安全面で大きな期待を寄せられることになります。

EVに限る話ではないですが、全固体電池の発火リスクの低さは、ウェアラブル機器への搭載という面でもポテンシャルがあります。

スマホやスマートウォッチなど、リチウムイオン電池では熱暴走による発火のニュースがありますが、全固体電池になることでこういった課題も解決されることが期待されています。

全固体電池の種類/分類

全固体電池はその形状や電解質によって種類があり、分類されています。

電解質による分類

酸化物(セラミック)系

酸化物系は金属を焼いて固めたものになります。こちらは製造方法が限定的になりますので、電池に使う素材の選択肢に制限がかかってしまいます。

強みとしては安全性が高いことがあげられますが、容量が小さくなってしまう点が弱みになります。

硫化物系

こちらは硫黄を含む化合物です。強みとしては大きな容量を確保できることです。そのためEVには向いています。しかし、可燃性であり、また毒性もあるために取り扱いが難しいことが弱点です。

形状による分類

バルク型(箱型)

こちらは箱型の計上の全固体電池。大容量で大きい事が特長で、EVの他に大型機器に適しています。反面その大きなサイズのために用途には制約がかかってしまいます。

薄膜型

こちらは薄い形状で、基盤に貼り付けることができるタイプになります。小型かつ柔軟で、耐久性も良く長く使うことができます。

しかし、薄型ということで電池のセルあたりの容量については小さく、ウェアラブル機器などに使うことが限界です。

全固体電池はいつ社会実装=実用化される?

新しい電池のタイプとしてこれまでの制約を乗り越え、新しい可能性をもたらす全固体電池ですが、完全な実用化はまだされていません。

新しい技術も、大量生産しかつコストを抑えて、長いスパンで活用できるようにしなくてはいけません。

ここからは実用化に向けての課題をご紹介します。

とにかく作るのにコストがかかる

全固体電池の製造はまだ大量生産を迎えてはおらず、試作段階です。固形の電解質を持つ電池の製造は、液体電解質を持つリチウムイオン電池に比べて高くなります。

材料についても高くなりますが、製造のプロセスが複雑なこともあり、全体のコストが大きくなっています。

2019年に国立研究開発法人科学技術振興機構 低炭素社会戦略センターが発表している提案書では、全固体電池の製造コストは61~356円/Whであり、従来のモデル14円/Whに比べると、約4~25倍とのことでした。

  • 固体電解質の価格が高い
  • 固体電解質の使用量が多い
  • 硫化物を扱うために工程が多い

イオン電導性、化学的な安定性、形状を理想の形に整えられる柔軟性を求めるうえに、そもそもの固体電解質価格が高く、その使用量も多い。

さらに硫化物系の固体電解質をとりあつかうために工程が増えていることが、製造工スト高騰の要因となっています。

参考:蓄電池システム(Vol.8) —全固体リチウムイオン電池の製造コスト計算と研究課題—|提案書 | 低炭素社会実現のための社会シナリオ研究事業

大量生産のための製造技術や設備の不足

生産のコストが高い点の他にも、そもそもの生産のための設備の整理ができていないことも課題です。

固体電解質は特に硫化物のものについては、水分と反応して硫化水素が発生してしまいます。それを防ぐためにも湿度管理が徹底されなくてはならず、製造工程の全体における環境の徹底が重要です。

さらに、固体電解質の取り扱いは液体電解質とはかなり異なるために、専用の設備の開発を求められます。こうした理由から大量生産のためのライン構築がうまく進まないという現状があります。

日本国内での実用化に向けた取り組み

EVの未来を変えるような全固体電池ですが、一般への実用化にはまだまだ課題があります。しかし、日本国内でも各車両メーカーがこの課題を打破すべく取り組みを進めています。

2027~2028年での実用化を明言するトヨタ

国内メーカーの中でも、特に具体的なロードマップを示しているのがトヨタ自動車です。

  • 「2027〜2028年」に実用化:単なる研究段階ではなく、すでに数年後の市場投入を明言しています。
  • 充電時間はわずか「10分」へ:住友金属鉱山との協業により、課題だった電池の耐久性を克服。現在のEVの弱点である「充電待ち」をガソリン車の給油時間並みに短縮することを目指しています。
  • 「日本連合」で量産体制を構築:出光興産や住友金属鉱山といった国内の材料メーカーとタッグを組み、安定して大量に生産する準備を整えています。

参考:住友金属鉱山とトヨタ、全固体電池用の正極材量産に向けて協業 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

2028年までの市場投入を目指し、量産化へも前進する日産自動車

日産自動車も2028年の市場投入を発表し、そこに向けて前進しています。

  • 2028年の市場投入:2028年度までに自社開発の全固体電池搭載のEVを市場投入すると発表しています。
  • 横浜工場での生産ライン創設:横浜工場内に全固体電池のパイロット生産ラインを構築中。
  • 「実車サイズ」での性能確認に成功:2026年4月の発表によると、実際の車両に搭載する規模(23層構造)まで大型化した電池セルでの性能検証を完了。

参考:日産自動車、建設中の全固体電池パイロット生産ラインを公開

日産の全固体電池、実車サイズで性能達成 28年度量産へ前進 - 日本経済新聞

四輪からバイクまで、全モビリティを全固体で革新するホンダ

ホンダも全固体電池の市場投下に向けて動いています。2020年代後半での市場投入を狙い約430億円の投資を発表しています。

  • 栃木県に全固体電池生産パイロットライン建設、公開:栃木県のさくら市に全固体電池生産のパイロットラインを建設、2025年から全固体電池の実証生産を開始しています。
  • 四輪だけでなく二輪他モビリティにも展開:ホンダは多様なモビリティを持っているため、四輪に限らずに全固体電池を適用していることを検討しています。

参考:栃木県さくら市にある全固体電池のパイロットラインを初公開 | Honda 企業情報サイト

日本国内の自動車メーカーも様々な実証を重ねてこの全固体電池の実用化に向けて取り組んでいます。

海外での全固体電池への取り組み

海外においても複数の自動車メーカーが実用化に向けて、その課題を解決するために尽力しています。

例えばドイツのフォルクスワーゲンは自らのバッテリー事業兼子会社のパワーコーと、米国スタートアップのクアンタムスケープで全固体電池の大量生産に向けての合意を行っています。

そこから最新鋭の全固体電池生産ライン「イーグルライン」をサンノゼ本社工場に設置し、2026年初めには生産を開始しています。

また、メルセデス・ベンツはアメリカのバッテリー開発企業ファクトリアル・エナジーと提携を行い、全固体電池の共同技術開発をしています。共同開発にはステランティスも参加しています。

メルセデス・ベンツはそのモデル「EQS」に全固体電池のプロトタイプを搭載し試験走行を行い、結果途中充電無しで1,205kmの走行を達成。革新的な結果を残すこととなりました。

BMWとフォードにおいても、アメリカの全固体電池開発スタートアップ企業であるソリッドパワーへの出資を実施。2021年の出資の後2022年には試験用の自動車向け全固体電池を調達しています。

さらに、このプロジェクトには2025年にサムスンSDIも参画し、さらに開発と実用化に向けて進行しています。

参考:米クアンタムスケープ、フォルクスワーゲンと全固体電池の大量生産に向けた合意を発表(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ

参考:米QSの次世代固体電池生産ライン、来年2月稼働へ | 電波新聞デジタル

参考:メルセデス・ベンツ 全固体電池で1205km走破 5年以内に「ゲームチェンジャー」投入 | AUTOCAR JAPAN

参考:BMWとフォード、全固体電池の米社への出資拡大 - 日本経済新聞

参考:BMWとソリッドパワーの全固体電池開発、サムスンSDIが参画…実用化加速へ | レスポンス(Response.jp)

全固体電池の登場はゲームチェンジャーになるが、適材適所で実装されていく

全固体電池はこれまでの液体電解質をもつ電池とは異なり、急速充電、大容量、安全性改善の面で大きな期待をされています。

ゲームチェンジャーとしてEVの普及にも大きく寄与するこの全固体電池は、トヨタ、日産、ホンダ3社が2028年を目指して社会実装化を進めており、やや前後するにしても近い将来にEVオーナーにとっても身近な存在となるでしょう。

もちろん、生産コストや製造ライン整備の課題も抱えており、まだ解決すべきことが残されています。

そして、全固体電池がすべての電池に変わるわけではないと考えています。適材適所、これまでのリチウムイオン電池が適している製品には、リチウムイオン電池が使用されていくと思います。

リチウムイオン電池もさらに高性能化が期待されていますし、EVのモデルによって搭載を使い分けていくことが予想されます。

軽EVのような近距離乗り回しの普段使いのEVでは小さな容量のリチウムイオン電池を引き続き使うかもしれません。反対に大型SUVのEVやトラックやバスなどの大型商用車には全固体電池が積極的に導入されていくとも考えられます。

複数の電池を使い分けて、より効率的、そして快適なEVの未来が訪れるかもしれません。