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EVの基礎知識・導入編
EVバッテリーのSOC、SOHとは?|意味をわかりやすく解説&長持ち充電のポイント
2025年11月7日 更新
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近年、EV(電気自動車)を購入する方が増え、「走行中にあとどれくらい走れるのか」「バッテリーの寿命はどのくらいなのか」といった質問をよく耳にするようになりました。
実は、その答えを知るためのカギとなるのが「SOC」と「SOH」という2つの指標です。
どちらもバッテリーの状態を示すものですが、意味はまったく異なります。SOCは“いまどれくらい充電されているか”、SOHは“バッテリーがどれくらい元気か”を表しています。
つまり、「SOCが100%でもSOHが低ければ、実際には新車時よりも走行距離が短くなる」――そんなこともあるのです。
このコラムでは、
- SOCとSOHの違いをわかりやすく整理し、
- それを知ることでEVをより安心・快適に使うためのポイントを紹介します。
すでにEVに乗っている方はもちろん、「これからEVを買おうかな」と検討中の方にも役立つ内容です。
ぜひ最後まで読んで、あなたのEVを長く・気持ちよく乗り続けるための知識として活用してください。
SOCとは?(State of Charge)― EVの「いまどれくらい充電されているか」を示す指標
SOCとは「State of Charge(ステート・オブ・チャージ)」の略で、日本語では「充電率」または「充電状態」と呼ばれます。
EV(電気自動車)のバッテリーが、満充電に対してどのくらいの電力を蓄えているかを示す指標です。たとえば、満充電容量が1000mAhの電池から300mAhを使用した場合、SOCは次のように計算されます。
(1000-300)÷ 1000 × 100 = 70% つまり、この時点ではバッテリー残量が70%ということになります。
EVにおけるSOCの役割
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EVではSOCが「あと何%」「あと何km走行可能」といった形で車両のディスプレイやアプリに表示されます。
SOCを確認することで、ドライバーは充電タイミングを判断したり、走行計画を立てたりできます。SOCはEVの航続距離や充電計画を管理するうえで、最も基本的かつ重要な数値といえるでしょう。
SOC表示が変動する理由
SOCは単純に残量を示すだけでなく、外気温や走行負荷、バッテリーの劣化状態などの影響を受けて変化します。
たとえば寒い日は電池の性能が一時的に低下し、SOCが急に減ったように見えることがあります。これはバッテリーが持つ電力量そのものが変わったわけではなく、環境条件によって一時的に使える容量が減るためです。
SOC表示は「実際のバッテリー残量」とは少し違う
EVのメーターパネルに表示されているSOC(バッテリー残量)は、厳密にはバッテリーの本当の充電率とは一致していません。これは、自動車メーカーがバッテリーを長持ちさせ、安全に使用できるようにするための設計上の工夫です。
一般的にリチウムイオン電池は、満充電や完全放電を繰り返すと劣化が早まる特性があります。そのためメーカーは、電池の上下に「使わない領域(マージン)」をあらかじめ設定しています。

たとえば、実際のバッテリー容量のうち90%を“満充電(100%表示)”、10%を“空(0%表示)”として管理するような仕組みです。つまり、メーターで100%と表示されていても内部的にはまだ余裕を残しており、逆に0%になっても完全に空ではありません。
このようなSOC管理によって、バッテリーの急激な劣化を防ぎ、長期間にわたって安定した性能を保てるようになっています。
SOCを正しく理解するポイント
スマートフォンのバッテリー残量のように、SOCは日常的に目にする数値ですが、EVの場合は走行距離や電費(Wh/km)にも関係します。
表示されるSOCが実際の航続距離と完全に一致しないこともありますが、それは走り方や環境条件の影響を反映しているためです。SOCを「EVのエネルギー残量をリアルタイムに示す目安」として理解しておくとよいでしょう。
SOHとは?(State of Health)― EVバッテリーの「健康状態」を示す指標
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SOHとは「State of Health(ステート・オブ・ヘルス)」の略です。
バッテリーが新車時の状態(初期性能)に対して、どれくらいの性能を保っているかを示す指標です。簡単に言うと、バッテリーがどれくらい元気かを表す数値です。
たとえば、新品時のバッテリー容量を100%として、劣化によって容量が80%まで低下した場合、そのバッテリーのSOHは80%となります。
SOHが低下するとどうなる?

SOHが下がると、同じSOC(充電率)でも走行できる距離が短くなります。つまり「満タンにしても航続距離が以前より減った」と感じるのは、SOHが低下しているサインかもしれません。
さらに、充電にかかる時間が延びたり、急速充電時のパワー制御がかかったりすることもあります。これはバッテリーが安全に使えるよう、車両システムが自動的に調整しているためです。
EVにおけるSOHの確認方法
EVではSOHがメーター上に直接表示されない場合もありますが、メーカーの専用アプリや診断ツールを使って確認できるケースがあります。
また、整備工場やディーラーでは専用機器でSOHを測定し、劣化度を数値で確認できます。中古EVの状態チェックや、保証対象の判断にもこのSOHが重要な役割を果たします。
SOHを保つためのポイント
SOHを長く保つためには、急速充電を繰り返しすぎないことや、満充電・過放電状態で長時間放置しないことが大切です。
高温・低温環境でもバッテリーは劣化しやすいため、できるだけ安定した環境下で使用することが望まれます。メーカーが推奨する「20〜80%の範囲内での充電運用」は、SOHの維持にも有効です。
「走行できる距離」で考えるSOCとSOHの違い
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SOCとSOHの違いを文字だけで理解するのは少し難しい場合もあります。そんなときは、「走行できる距離」というキーワードをもとにイメージすると分かりやすくなります。
SOCの低下=「今、走れる距離が短くなる」
SOCは現在の充電状態を示す指標です。
そのため、SOCが低くなると、現在の充電量で走行できる距離が短くなることを意味します。たとえば、SOC50%なら、残り半分の電力で走行可能な距離を示している、と考えられます。
SOHの低下=「満充電でも走れる距離が短くなる」
一方、SOHはバッテリーの健康状態を表す指標です。SOHが低下すると、新車時に比べて1回の満充電で走行できる距離が短くなることを示します。
SOCが100%でも、SOHが80%のバッテリーなら、満充電でも実際に使える電力量は新品時の80%しかありません。
SOHを比較するタイミング
SOHの変化を確認する際、比較するタイミングは購入時でも1年前でも問題ありません。
外気温や使用環境など、条件を揃えて走行したときに「以前より走れる距離が短くなった」と感じる場合は、SOHが低下している可能性があります。
SOCを低下させてしまう主な要因
EVのバッテリー残量を示すSOC(State of Charge)は、単純に電力を消費するだけでなく、外的要因や運転環境によっても変化することがあります。ここでは、SOCが低下してしまう代表的な要因をわかりやすく解説します。
外気温の影響
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バッテリーの性能は温度に大きく左右されます。特にEVのバッテリーに使われているリチウムイオン電池は、寒すぎる環境では内部の化学反応が鈍くなり、使用可能な電力量が減少します。
逆に暑すぎる環境では、バッテリーの安全性を守るために車両が自動的に出力を制限することがあります。その結果、SOCは同じ残量でも、走行可能距離が短くなるように見えることがあります。
冬場の寒い朝に「SOCは50%なのに思ったより距離が伸びない」と感じるのは、この温度影響が原因です。
SOHを低下させてしまう主な要因
SOHが低下すると、満充電でも走行できる距離が新品時より短くなるため、EVの長期的な性能や快適さに大きく影響します。ここでは、SOHを低下させる代表的な要因と、日常で気をつけるポイントをわかりやすく整理します。
0%〜100%の完全充放電の繰り返し
リチウムイオン電池は、完全放電や満充電を繰り返すと内部の化学反応に負荷がかかり、劣化が早まります。特に、バッテリー残量が0%になるギリギリまで走行するような過放電はSOHに悪影響を与えます。
日常では、バッテリーを完全に使い切らず、残量をある程度残して運用することが推奨されます。
急速充電の多用
急速充電は短時間で充電できる便利な機能ですが、繰り返し使用すると電池内部に熱が発生し、化学反応に負荷がかかります。その結果、SOHの低下が進みやすくなります。
可能であれば、日常的には普通充電を基本に使用し、急速充電は必要なときだけに留めることが望ましいです。
外気温や使用環境の影響
バッテリーは温度変化に敏感です。高温環境では化学反応が進みすぎて劣化が早まり、低温環境では内部抵抗が増えてSOCの変動が大きくなります。
また、車両の保管場所も影響します。特に暑い日差しが直接当たる場所や極寒地での放置は、SOH低下のリスクが高まります。
長期保管時の充電状態
長期間EVを使用しない場合、満充電状態での放置はバッテリーに負担をかけます。バッテリーを長持ちさせるためには、SOCを50〜70%程度にして保管することが推奨されます。
使用直前に充電することで、無駄な負荷を避けられます。
SOCとSOHを意識して安心・快適なEVライフを

EVの充電率(SOC)とバッテリー健全度(SOH)は、どちらも走行性能や快適なEVライフに直結する重要な指標です。SOCは「今どれくらい走れるか」の目安、SOHは「バッテリーがどれくらい元気か」を示すものだと理解しておくと、日々の運転や充電計画に役立ちます。
SOHの低下を防ぐためには、完全放電や満充電の繰り返し、急速充電の多用、極端な温度環境での長期保管を避けることがポイントです。
また、SOCを意識して30〜80%の範囲で充電を管理することで、電欠の心配を減らしながらバッテリー寿命を延ばすことができます。
ただし、次に必要な走行距離分の充電はしておくようにし、電欠になることは気を付けましょう。
このように、日々の充電と走行を少し意識するだけで、EVはより安心・快適に長く使うことができます。SOCとSOHの特徴や違いを理解し、余裕をもった運転計画を立てることで、EVライフを安心して楽しみましょう。



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