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電気自動車に雷が落ちたら?EVオーナーが知っておきたい安全性の話

EVの安全性・リスク管理

電気自動車に雷が落ちたら?EVオーナーが知っておきたい安全性の話

2025年10月17日 更新

電気で走るEV(電気自動車)に雷が直撃したらどうなるんだろう?高電圧のバッテリーを積んでいる分、不安に思う方も多いかもしれません。

結論から言うと、電気自動車は落雷に対して安全に設計されています。自動車メーカーでは実際に、雷に相当する電力を使った「人工落雷試験」を行い、車両の安全性を確認しています。

雷のエネルギーはどれくらい強力?

雷は数億~数十億ボルト、数万〜数十万アンペアという、桁外れの電圧・電流が一瞬で流れます。ざっくり言えば、100ワットの電球約90億個分のエネルギーが、わずか1000分の1秒ほどで空から地上に放たれるのです。

そんな膨大なエネルギーが車に落ちたら…と想像すると怖くなりますが、ここで知っておきたいのが「電気の流れる性質」です。

電気は流れやすいところを通る

電気は、空気中や人間の体よりも金属などの導体(電気を通しやすいもの)を選んで流れます。自動車の車体は鋼板でできており、雷が落ちた場合でも車体の外側を電流が流れて地面へと抜けるため、車内にいる人は基本的に安全です。

これは「ファラデーケージ」と呼ばれる現象で、飛行機や鉄道、普通のガソリン車でも同じ原理が働きます。EVも例外ではありません。

実際にEVに雷を落として実験も行われている

実際に電気自動車(EV)に雷を当てるとどうなるのか?JAF(日本自動車連盟)が行った人工落雷実験では、以下のような結果が確認されました。

まず、落雷直後に「EV-HEVシステム」や「高電圧バッテリーシステム」、「電動型制御ブレーキ機能」など、車両の電子制御系に異常が検知されました。車が始動しなくなったケースもあり、これはECU(車載電子制御ユニット)の故障や、異常電流を検知したセーフティシステムの作動によるものと考えられています(中部大学・山本教授の見解)。

また、タイヤには焦げたような痕が残ったものの、破裂には至りませんでした。ただし、雷のエネルギーによってパンクなどのダメージが起きる可能性はあると指摘されています。

一方で、車内に設置されたマネキンには目立った影響は見られず、ドアや窓を閉めていれば電流が車内に侵入することはほとんどないという結果も得られました。

ただし、車内の金属部分に触れていると感電のリスクがあるため、注意が必要です。

実験からわかること

この実験からわかるのは、落雷によりEVが故障し、走行不能になる可能性はある一方で、車内にいる人の安全性は高いということです。

雷雨時にはなるべく広い場所での停車を避け、車内では金属部分に触れないようにして過ごすのが安全といえるでしょう。

参考:落雷時、車や車内にいる人への影響は?(JAFユーザーテスト) | JAF

自動車メーカーも試験をしている

他にも、たとえば日産の初代「リーフ」では、人工的に雷を模した実験を行い、EVがどのように電流を逃がすのか、安全性が確保されているかを検証しています。

これにより、万が一落雷を受けても、車内の人が守られる構造になっていることが確認されました。

参考:日産がEVの安全性を立証するために実施してきた冠水テストと雷試験がおもしろかった | 自動車情報・ニュース WEB CARTOP

とはいえ、雷の日に気をつけたいこと

周囲に高い建物や木がない広い場所(ゴルフ場や大平原など)でクルマ1台だけポツンと停めていると、落雷を受けるリスクが高まります。

そんなときは、近くの避雷針が設置された建物に避難するのがベストです。建物内でも、避雷針からの導電線には近づかないようにしましょう。

タイヤはゴムなのに雷が通るの?

「タイヤはゴムだから絶縁されていて安心では?」と思う方もいるかもしれません。確かにゴムは絶縁体(電気を通さない)ですが、雷はその常識を超えるレベルの電圧・電流を持っているため、ゴムや空気さえも突き抜けて電流が流れます。

最終的には、車体を伝って地面まで電気が流れていく、というのが落雷時の実際の流れです。

EVは雷にも備えて設計されている

EVは巨大なバッテリーを搭載していますが、雷に対する安全性についてもきちんと考慮され、メーカーによる厳しい試験をクリアしています。

とはいえ、安全のために落雷が予想される天候では、広い場所に停車せず、建物の近くに駐車するなど、少しの注意を心がけるとより安心です。

「EVに雷が落ちたら危ないのでは?」という疑問は、ごく自然なもの。でも、きちんとした設計とメーカーの試験により、車内にいる限りは基本的に安全です。

知識があれば、不安は安心に変わります。これからも、正しい情報をもとに賢くEVと付き合っていきましょう。